5月の読書

「読書」と言えそうな読書は以下の通りであった。『サピエンス全史』は、今更感を覚えつつ読んだのだが、前半は「どこか(たぶんNHKスペシャルとか)で聞いたような話」が綺麗にまとまっていて、啓蒙書としてはさすがよくできていた。後半は自分の専門分野というか本業というかに近い話がけっこう詳しく紹介されており、旅先で知り合いにあったような気分であった。

 

『航空宇宙軍史』、先月まで銀英伝を読んでいたのだが、数万の艦隊が決戦する世界から40人乗りで大型艦と言われる世界観に飛ばされることになった。これもまた面白い。ハードSFといってよい作品だと思うが、サイバーパンク寄りの活劇としても面白く、これまた長年にわたって愛されるのが納得である。

 

5月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1935
ナイス数:2

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
読了日:05月30日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
航空宇宙軍史・完全版一  カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)航空宇宙軍史・完全版一 カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:05月27日 著者:谷 甲州
サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
読了日:05月09日 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
小説 映画ドラえもん のび太の宝島 (小学館文庫)小説 映画ドラえもん のび太の宝島 (小学館文庫)
読了日:05月05日 著者:川村 元気,藤子 F不二雄,涌井 学
政治を科学することは可能か (単行本)政治を科学することは可能か (単行本)
読了日:05月03日 著者:河野 勝
フォトドキュメント東大全共闘1968‐1969 (角川ソフィア文庫)フォトドキュメント東大全共闘1968‐1969 (角川ソフィア文庫)
読了日:05月01日 著者:渡辺 眸

読書メーター

後輩の見たF:『ドラえもん物語 ~藤子・F・不二雄先生の背中~』感想

昨年発売されて、(映画シーズンなどとは重ならなかったにもかかわらず)一時期は本屋さんで平積みされるくらい押されていた、むぎわらしんたろうドラえもん物語~藤子F不二雄先生の背中~』を、やっと読むことができた。というのは不正確で1か月くらい前に読んでいたのだが、感想をまとめられずにいた。 

 

Fについては多くの評伝や伝記が発表されているが、「アシスタント=同僚であり後輩漫画家から見たF先生」というのは新しい視点だった。今までは、同時代の漫画家仲間たちによる評伝が多かったような気がする。世代的には、「ドラベースの作者がドラえもんの作者について語る」ということ自体、少しワクワクする。

藤子F不二雄がどんな仕事スタイルで漫画を描いていたのか、アシスタントにどう接していたのかが描かれているのは、今まで見えていなかったF像で面白い。特に、むぎわらしんたろうが描いた原稿にびっしりとコメントをして返したというエピソードや、アシスタントを観劇につ入れていったりと、後輩を育てる姿は、「子ども心を失わない」Fと同時に「若手を引っ張る大人」の姿が見て取れる。

 

中でもインパクトが強かったのが、有名な藤子プロスタッフにあてた手紙*1のくだりだった。今では後輩にあてた温かいエールの言葉として紹介されることも多いが、あの手紙を受け取った当時、現役アシスタントであったむぎわらしんたろうは「どうしてそんな寂しいことを言うんだ」と、むしろショックを受けたという。伝記を読む我々はその後に待ち受けていることを全て知っているのだが、確かに、あの時あの状況で『ねじ巻き都市冒険記』の締め切りと対峙しながらあの「遺書」を思わせる手紙を受け取った藤子プロの人々は、複雑な思いだったのだろう。

 

事実として新しいことが描かれたというよりは、新たな視点で、「部分的には同時代を生きた後輩漫画家から見た藤子F不二雄」を描いてくれる伝記である。その企画がおいしいので、どうせなら2巻構成くらいにしてくれてもよかったのにとも思うのだが、後期藤子ファンにとってはとても嬉しい作品だった。

4月の読書

4月はこんな本を読んでいた。その他、本業(?)のために読んだ本もあるけど、趣味のブログに載せるのは無粋なので割愛。

 

4月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1412
ナイス数:6

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)
読了日:04月30日 著者:ピエール バイヤール
宝島 (新潮文庫)宝島 (新潮文庫)
読了日:04月22日 著者:ロバート・L. スティーヴンソン
勉強の哲学 来たるべきバカのために勉強の哲学 来たるべきバカのために
読了日:04月12日 著者:千葉 雅也
実証分析入門  データから「因果関係」を読み解く作法実証分析入門 データから「因果関係」を読み解く作法

読了日:04月02日 著者:森田果
古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)感想
読み物として面白いのは純粋な自伝である第一部で、ホーメロス発掘のために商売で成功していく過程とか、語学の学習術とかが書かれている。後半は発掘記録を編集したもので、その道の人ならざる自分には「なるほど」という程度のことであるが、世界史の通史的教科書の一冊くらいは手元に置いておこうとおもった。
読了日:04月01日 著者:シュリーマン

読書メーター

 

千葉雅也『勉強の哲学』に、同書で紹介されていたバイヤール『読んでない本について堂々と語る方法』にと、「読書についての本」を多く読んだ月でした。

3月の読書録

3月に読んだ本はこんな感じだった。

 

3月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2481
ナイス数:4

人生に成功をもたらす日記の魔術 (サンマーク文庫)人生に成功をもたらす日記の魔術 (サンマーク文庫)
読了日:03月31日 著者:表 三郎
銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 〈10〉 落日篇 (創元SF文庫)
読了日:03月22日 著者:田中 芳樹
銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)
読了日:03月20日 著者:田中 芳樹
現代日本政治研究と丸山眞男―制度化する政治学の未来のために現代日本政治研究と丸山眞男―制度化する政治学の未来のために
読了日:03月19日 著者:渡部 純
銀河英雄伝説 〈8〉 乱離篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説 〈8〉 乱離篇 (創元SF文庫)
読了日:03月16日 著者:田中 芳樹
銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)
読了日:03月12日 著者:田中 芳樹
銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)
読了日:03月07日 著者:田中 芳樹
内側から見る 創価学会と公明党 (ディスカヴァー携書)内側から見る 創価学会と公明党 (ディスカヴァー携書)
読了日:03月04日 著者:浅山 太一

読書メーター

 

 『銀河英雄伝説』は本編を読み終えた。日本SF界/日本サブカル界において「現代の古典」の地位を占めるのに納得の、一大叙事詩だった。最終巻の「解説」でも触れられているが、「自由惑星同盟銀河帝国の闘い」というベタ中のベタな構図でありながら、2巻や5巻や8巻で「え、そうなるの!?」という展開をみせてくれる。

 内容に加えて、先月以来「銀英伝読んでるんですよ」というだけで、世代の異なる人も含めて色んな人と会話が弾んだ。こういう楽しさも「現代の古典」ならではだと思う。

 それにしても一か月に(娯楽ものとはいえ)小説5冊は我ながら怠けすぎの感があるし、今になって焦らないでもない。

2月の読書録

1年以上(主に生活上の忙しさ等によって)放置してしまったが、自由に書きたいこともあったりするので、まずは読書録程度のことからゆっくり再開してみたい。

2月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1861
ナイス数:6

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)
読了日:02月25日 著者:田中 芳樹
銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈3〉雌伏篇 (創元SF文庫)
読了日:02月23日 著者:田中 芳樹
銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫)銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫)
読了日:02月21日 著者:田中 芳樹
蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船・党生活者 (新潮文庫)感想
代表作『蟹工船』は、悲惨な話でありながらも、最後の最後でハッピーエンドなあたり、多喜二の若々しい力強さのようなものを感じた。B面の『党生活者』は、革命思想のために私的生活を際限なく犠牲にしていく態度は結局のところ全体主義に...といった真面目な感想は一旦おいておいて、エンターテイメント小説として読めた。
読了日:02月18日 著者:小林 多喜二
代替医療解剖 (新潮文庫)代替医療解剖 (新潮文庫)感想
代替医療(鍼治療とかそういうの)について、その効果に関する検証結果を紹介する本だが、それ以上に、「この治療は効くのか?」を医学がいかに検証してきたかという科学史の物語として面白い。「基礎となるメカニズムの解明は、のちの研究にゆだねればいいのだ」という割り切り方を、潔くてわかりやすいとするか、科学的研究として物足りないとするか意見の分かれるところだろうけれど、そのアプローチがいかに科学を支えてきて、そして今も支えているかを痛感させられる。
読了日:02月15日 著者:サイモン シン,エツァート エルンスト

読書メーター

 

我ながら銀英伝読みすぎである。しかし、5巻の「解説」にもある通り、「創元SF文庫版で初めて手に取り、続きが気になってしかたない」ので、今も6巻を読み進めている。

今月、特に推したい本を挙げるとすれば『代替医療解剖』だろうか。上でも述べた「メカニズムの解明は、のちの研究にゆだねればいい」という立場は、特に社会科学系で統計を使っている人にとっては、けっこうセンシティブな話題の起源の一端を示しているんじゃないだろうか、という気がする。

「大みそかだよドラえもん 1時間スペシャル」感想

しばらくぶりの更新となってしまいましたが、今年の大みそかスペシャ*1の感想を。

 

全体の構成

今年の大みそかスペシャルは、昨年同様1時間3作構成でした。ただし、2作めは川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムのオリジナルアニメを地上波後公開したもの。

作品数だけで価値を測れるものではありませんが、昨年がオリジナル4作構成だったことを思うと、「一歩後退」か。

 

続いて、各作品について感想を。

 

「戦国のび兵衛がんばれ」

原案は「ご先祖さまがんばれ」*2スネ夫に「ご先祖様が家老だった」と自慢されたのび太が自分の先祖も立身出世させようとする、という基本的構成は同じだったものの、オリジナルキャラのしず姫や服部ジャイ造が登場したりと、かなり独自の展開を取り込んだ準アニメオリジナル作でした。実はのび太ドラえもんの介入によってスネ夫の先祖が出世していたというタイムパラドックス的なオチは原作通りだったものの、事の真相にしず姫さまは気づいてくれていたので、原作よりも優しい展開だったか。個人的には、この終わり方も好きでした。

放送時間上は本作で前半30分を使っており、スペシャル放送の中心になるアニメオリジナル中編的役割*3を負っていたといえそうです。

 

ドラえもんパーマン危機一髪!?」

 

パーマン連載開始50周年を翌年(明日からですが)に控えての放送でした。

前述のとおり、元はFミューのオリジナルアニメ*4。F作品コラボらしい手が込んだ小ネタはさすがの出来。

そのことは明示されなかったのですが、実は(もちろん?)続く「星野スミレのひみつの恋」とリンクしています。スミレちゃんが「どうして私がパーマンだと知っているの!?」と驚く展開がありましたが、結果的にはこれも、次作の「秘密」を暗示する複線になっていました。

 

「星野スミレのひみつの恋」

原作は「影とりプロジェクター」*5。こちらは、前半は「架空通話アダプター」*6をベースとした展開でしたが、違和感なく構成されていました。

作品のチョイスは、おそらくはパーマンつながりと思われますが、芸能人の私生活をめぐるスキャンダルにむらがる大衆、それに翻弄される芸能人という一個人という意味では、今年一年を締めくくるにあたって「時事ネタ」という側面もあったのかもしれません。

最後は原作通り「ここに書くわけにはいきません」という、優しい終わり方でした。スミレちゃんの大切な人の正体が気になる方は、ぜひ「目立ちライト」*7をご覧あれ。ちなみに、冒頭シーンに登場していた芸能リポーターは、さりげなく「目立ちライト」に登場する、あのリポーター。目立ちライトの効果からは、解放されていたようです(?)。

年の最後に、作品の枠を超えて、なかなか手の込んだ一作でした。

 

 

というわけで、今年最後のドラえもんの感想でした。

大みそかに、アニメをスペシャル放送しているということ自体ドラえもんの「すごさ」なのだと思いますが、個人的には、また2時間or3時間のスペシャルを見てみたいなーという思いもあります。一方で、今年のスペシャルには、特にパーマン50周年を記念してからの「星野スミレのひみつの恋」という流れには、短いながらも質の高いスペシャルを見せてもらった、という満足感もありました。

 

来年からのアニメドラえもんにも期待しつつ、みなさま、よい新年をお迎えください。

 

映画『ドラえもん のび太の新・日本誕生』感想(1)

年度替わりの忙しさで3か月以上にわたって更新を放置してしまい、事実上のブログ閉鎖か、という様相を呈していましたが、またぼちぼち更新していきたいと思います。

 

 というわけで今回から、何回か(少なくとも2回、たぶん3回?)くらいに分けて、そろそろ落ち着きつつある今年の映画『ドラえもん のび太の新・日本誕生』について、少し感想をアップしたいと思います。

ドラえもん 新・のび太の日本誕生

ドラえもん 新・のび太の日本誕生

 

(まだ映像ソフト等は予約もはじまっていないので、かわりにゲームのリンクをはってみました*1

 

全体の感想

「良かった」というのが、全体的な感想です。細かいことで「あー、こっちよりあっちがよかった」というようなこともあるにはあるのですが、全体としてはとても良かった。

この意見は周囲の評判を聞いていてもおおむね共有されているようですが、一方で「どこが良かったか」については、割と意見が分かれるのではないか、という気もします。

というわけで、この記事では主に「自分から見てよかった」ところについてコメントしてみたいとおもいます。

 

歴史をつくる物語としての洗練

原作、旧作から一貫して『日本誕生』に共通するテーマとして、「日本というくにの歴史がはじまる瞬間に立ち会う物語」という点が挙げられるでしょう。そこは、今回のリメイクでは今まで以上に洗練されて描かれていました。

 

特によかったのはクライマックス。原作ではのび太がドラコ・グリ・ペガを連れてのび太が現れると比較的簡単に倒されていた感のあったギガゾンビとドラえもんたちとの攻防が、歴史というテーマにそった形で、より盛り上げられていたことでした。

 

ギガゾンビが、今作で追加されたアイテムである亜空間破壊装置でタイムトンネルの破壊を企てるなか、その亜空間破壊装置にククルがとびかかり、必死の力を振り絞りながら素手で装置を破壊する。

そしてドラえもんとギガゾンビの二度目の対決。22世紀の原始生活セットの石槍では勝てなかったドラえもんが、今度はククルの本物の石槍でギガゾンビに勝利する。そして仮面を割られ、ただ狼狽する老人の姿が見えたギガゾンビに「偽物の歴史が、本物の歴史に勝てるもんか!!」と言い放つ。

 

この流れは、歴代映画ドラえもんの中でも、屈指の名クライマックスだったと思います。ドラえもんvsギガゾンビという、基本的には未来人vs未来人という構図の中で、最も無力なはずのククルが未来人の作り出した亜空間破壊装置に素手で立ち向かうという姿には、まさに「本物の歴史」が「偽物の歴史」に立ち向かうたくましさが表れていました*2。かつ、装置にとびかかり、幼い少年の身体の力を振り絞り亜空間破壊装置をへし折るククルの表現は絶妙だったと思います*3

そして亜空間破壊装置を破壊されたギガゾンビにドラえもんがとどめを刺すシーン。ドラえもんが敵と直接対決するという珍しさ、そして一見すると「1世紀負けた」前の対決と同じことの繰り返しのようにみえて、なぜかドラえもんが勝つという驚き。そして前述のセリフ、という流れも、観客の予想を裏切る勝利のカタルシスも相まって、クライマックスの頂点にふさわしい盛り上げ方をしてくれていました。

 

この「歴史をつくる物語」というテーマが編み込んだうえで、派手に盛り上げたクライマックスは、単に映画の華やかさを増すだけではなく、それまでの「歴史がつくられていく」描写(例えばドラえもんがヒカリ族に秘密道具を貸すことを拒んで「文明の発展」を語るシーン)を受けて、この映画に重みをもたせていました。

 

というわけで、今年の映画のクライマックスはーそのクライマックスをドラえもんとギガゾンビの対決と観る限りはー歴代映画ドラえもんの中でも最高クラスの名クライマックスだったのではないかと思います。そしてそれが、私が今年の映画を「名作」と思った理由でした。

 

というわけで今年の映画で一番好きだったことを書いたうえで、次はまた違ったことについて感想をまとめてみたいと思います。

(つづく)

*1:ちなみに、『日本誕生』は旧作もゲーム『ギガゾンビの逆襲』としてゲーム化されている。

*2:さらに、ドラコやペガが現れたシーンで、ヒカリ族の人々が手に手に石槍を持って、「ドラゾンビ様を助け出せ!!」とクラヤミゾクとギガゾンビ相手に殺到する様子が描かれ、そしてククルの父親とクラヤミ族の頭らしき人物との闘いも、比較的丁寧に描かれているこ。

*3:そして細かいことを指摘するなら、へし折られた亜空間破壊装置の断面が、何の変哲もない電子回路らしきものとして表現されていることにも芸の細かさを感じる。