ドラえもんのび太の宇宙英雄記-スペースヒーローズーの感想その2(制作背景に関する"憶測")

序.制作背景の憶測

先日『宇宙英雄記』についての感想をアップしました。その際は主に「一度実際に映画館で観てみた感想」を記したのですが、今回は少し視点を引いて、なぜ『宇宙英雄記』はこのような映画になったのか、について考えてみたいと思います。

「考えて」とはいうものの、プロフェッショナル達による映画制作の意図は、もちろん1人のファンによって推し量られるものではないでしょう。というわけで、今回のタイトルは「憶測」と副題をつけさせていただきました。

 

1.『宇宙英雄記』は評価されたか

わけあって公開初日には足を運べなかった『宇宙英雄記』ですが、公開*1から早3週間が経ちました。そろそろ、評価も出揃いつつある頃かと思います。

映画.comによれば、現時点で評価は3.1/5.0でした*2。他の映画ドラえもんとくらべても遜色のない評価で、映画館で観た時は「正直物足りない」と思っていたため、「思ったより高い」と感じました。つまり、現時点で『宇宙英雄記』は、一定の評価を獲得しているということになりそうです。

 

2『宇宙英雄記』の特徴は?

ただ、結果的評価は別にして、前回も述べた通り『宇宙英雄記』は、これまでの映画ドラえもんにはなかった特徴を感じました。その特徴は、端的に言えば、

・作り込みが映画らしくない=普段のアニメに近い

・ストーリーが単純

という二点。この二点は何を意味するのか。意見の分かれるところでしょうが、ここから、少し「憶測」をしたいと思います。

この二つの帰結は、それぞれ「低予算化」と「子ども向け路線」という目的の下に生じ、そして互いに連関したのではないでしょうか。低予算化するために普段のアニメ程度の作りにする、子ども向けのために話を単純化する、その単純な話なら普段の作りでも描ける、という風に。

ここで「子ども向け」という言葉には捕捉がいるでしょう。そもそも『ドラえもん』は子どものためにこそ描かれた作品だからです。ここで言っているのは、簡単に言えば「従来以上の子ども向け」ということ。今までの映画ドラえもんが小学生を狙っていたとするならば、そのターゲットをより下に、幼稚園~小学校低学年が中心になるまで下方修正したという感じです。

 

3.『STAND BY ME』との分業?

では、この「低予算化」と「子ども向け」が真実だったと仮定します*3。この路線は何を目的とするのでしょうか。

ここで考えられるのが、昨年公開された『STAND BY ME ドラえもん』との分業という可能性です。

『STAND BY ME』は『ぼく桃太郎のなんなのさ』以来の、1年の間に2作目として公開されたドラえもん映画であり、興行的に大成功したとはいえ、その制作が『宇宙英雄記』の制作にとって経済的圧迫となっていた可能性が考えられます*4。そこで、「低予算化」が要請されたのではないでしょうか。

一方、『STAND BY ME』は今までドラえもんを観ていなかった(観なくなっていた)年齢層に大きく支持を得る結果となりました。「結婚」「人生」というテーマや、映画の原作となったストーリーの選択、懐かしい風景の再現という演出からも、この「一度ドラえもんを卒業した大人からの支持を得る」という結果は、当然制作段階から意図されていたものと考えられます。すると、その『STAND BE ME』から半年ほどで公開されることとなる『宇宙英雄記』にはそれとは違う役割、つまり「まだドラえもんを観ていない子どもを取り込む」ことが期待された可能性があります。

こうして、「低予算」で「子どもを取り込む」という『宇宙英雄記』の路線が決定された、のかもしれません*5

 

終.『宇宙英雄記』をどう見るか。また、『日本誕生』に何を期待するか

と、ここまでファンなりに憶測を(あるいは邪推を)したうえで、もう一度『宇宙英雄記』について個人的異見を。

正直に言って物足りなかった、というのは確かです。映画ドラえもん、そして原作の大長編ドラえもんは、子ども向けでありながら、何歳になって読み返し観返しても楽しめる魅力がありました。それは何も藤子先生が直接手がけた作品だけでなく、『南海大冒険』以降の映画についても、一定程度当てはまることだったと思います。また、特に声優交代後の映画は、映像面でも普段のアニメにはない迫力をみせてくれていました。そういった映画の魅力がなかったのは、率直に言って残念でした*6

とはいえ、これも前回書いたように、周りで小学校に上がろうかというくらいの歳の子どもたちが楽しそうに映画を観ていたのは、ファンとしては嬉しいものがありました。

 

映画鑑賞後、一緒に観に行った友人と「周囲がドラえもんを卒業するくらいの年齢になった時、どうドラえもんと向き合ったか」という話になりました。1人孤独に楽しむか、好きな人を集めて同好会を作るか、隠すか、それともやめてしまうか。やはり、根本的に子ども向けである『ドラえもん』には、いわば「卒業する年齢」がつきまといます。

その「卒業した人たち」を呼び戻してくれる『STAND BY ME』は自分たちのようなファンにとっては嬉しい作品でしたし、卒業してもなお楽しめる今までの映画も、我々は楽しんできました。

とはいえ、それも全ては、「ドラえもんを好きになる」という瞬間があってこそのことであり、そうやって「ドラえもんのファンになる」子どもたちを増やせる映画だったとすれば、やっぱり『宇宙英雄記』はいい映画だったのかもしれません。

 

そして来年の『日本誕生』には、そうしてやって来た新たなファンと、従来のファン、そして戻ってきたファンたちを全て楽しませる、王道を行くようなリメイクを期待したいと思います。

 

少し感想を書くつもりが思いがけず「大長編」になってしまいました。今日はこのへんで。

*1:3月7日公開。

*2:3月30日午後6時10分閲覧。http://eiga.com/movie/80660/review/

*3:仮定だらけの論ですが、そこが「憶測」たる所以なので勘弁してください。

*4:もっとも、STAND BY MEは3年かけて制作されており、なぜ宇宙英雄記「だけ」に影響したのか説明できないという問題はある。

*5:本来なら具体的引用をすべきではあるが、一般論としてもレビューサイトを見ると「普段のアニメ」「子ども向け」という評価が、高評価にも低評価にも見られた。

*6:もちろん、短編は歳を取ったら楽しめない、ということではない。むしろ今になって読み返してみて、短編の魅力を再発見することも多い。